研修・見学の方々からの声101


 

私は、40代で体調を崩し、座禅と鍼灸で救われた経験から気に興味を持つようになり、還暦を前に鍼灸師になりました。以来、まがりなりにも気をうかがう治療を心がけてきました。しかしながら、脈診と手掌感覚に重きをおいた診断と選穴、手技には往々にして迷いが付きまとい、治療効果についても術者の納得と患者の受け取り方が必ずしも一致していないことが気になっていました。そのような中、かつて鍼灸学校の図書館で見た陰陽太極鍼のDVDを思い出し、吉川先生の論文やDVDを見返して、この鍼を習得することができたら前述の悩みの多くが解消するのではと思うに至りました。

私は、鍼灸とは気の流れを整えることで身体が持っている癒す力、つまり自己治癒力が発揮されて治癒につながる治療法であると考えています。一方、いわゆる特効穴に鍼をして特定の疾患を治すという治療法を否定はしないものの、それらに過度に傾斜する事には抵抗感がありました。
その点、陰陽太極鍼はどんな症状に対しても陰陽のバランスを整えてゆくことで、全身の経絡の疎滞を取り除き、気の流れを整える理想の鍼法でした。いくつかコツはあるものの、特定の疾患に対してそれ専用の治療を行うわけではありませんから、いわゆる難病と呼ばれる病気に罹患した患者さんにも治療を行うことができます。私の研修期間中にも、実際に難病の患者さんがいらっしゃって驚くべき改善をみられていたのが印象的でした。

陰陽太極鍼の特徴として、異常のある経絡を見つけ出すのに、問診、舌診、脈診に加え募穴診、首回りの経穴の反応、腓腹筋の反応といった患者自身の不快な感覚を利用していることが挙げられます。そして、それらの不快感が施術によって次々に消失することで患者自身が変化を認識でき、更に特筆すべきは、それらの反応を消し去る過程で患者が申告していた主訴も次々に消えていくと言うことです。まさに、陰陽のバランス、気の流れが整って自己治癒力が発動された証左だと思います。しかも、その変化のスピードは瞬時で、鍼灸学校時代に「気は一呼吸する間に6寸進む(一日に全身を50周する)」と聞いて「なんて大袈裟な」と思っていましたが、まさにそう言ったスピード感でした。

学生時代から「脈診十年」と言う言葉を繰り返し聞かされ暗澹たる気持ちになっていた私には、患者と共に異常のある経絡を探し出し、更に、その経絡上の異常経穴を同じく患者の実感で特定し、補瀉まで判定してゆける治療法は革命的なものに映りました。六部定位脈診で正経十二経の状態をぴたりと探り当てる名人芸には憧れるものの、十年かかったら自分は何歳になるのか、ならば要穴を中心に十二経全てを触ることは合理的です。この治療法では、古典に書かれていたり鍼灸学校で学んだりした常識的な選穴を覆すような配穴や補瀉が選択されることも有り、縮こまりがちな治療の幅が広がります。更に、施術法もDVD時代から進歩していて王不留行や皮内鍼を貼り付けると言う侵襲のほとんど無いものが中心で、子供や痛みに敏感な人にも受け入れられるものでした。

私が今回学ばせて頂いたことは吉川先生が長年の研究と臨床の結果から編み出された鍼法のエッセンス部分で、これからまだまだ臨床経験を積まないと使いこなせないことは他の鍼法と同じです。ただ、何がうまく行って何が行かなかったかを自分で把握できたり、治療結果から治療前の脈診や舌診で判定したことの正否を自ら点検できたりすることは、初学者には大変ありがたい陰陽太極鍼の特徴だと思いました。
これからは、少しでも吉川先生の教えを理解できるよう、先生がヒントを得られた古典や最新の書物にも目を通しながら臨床に活かしていきたいと考えております。

2018年3月4日
福岡県 鍼灸師
大谷隆輔




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