第5回世界鍼灸学会連合会学術大会
2000年11月12日〜15日 (韓国、ソウル)


繆刺法、巨刺法と陰陽太極鍼法(陰陽交叉鍼法)


帯広 東方鍼灸院 吉川正子

 

例1.3年前より右示指関節痛(陽明大腸経)で指の屈伸が不自由だった患者の左の太白(太陰脾経)に切皮程度の鍼をしたら、即時に痛みと関節の動きが改善し、同時に腹部の圧痛、硬結も全て消失し、短期間で治癒した。

例2.4年前より右腕尺側(太陽小腸経)が痺れていた患者の左足復溜(少陰腎経)に刺入 し、響かせたら、即時に小指側の痺れが消失し、2回で治癒した。

例3.10年前より後頚部の右天柱(太陽膀胱経)が痛くて、事務作業を継続できない患者の左足太谿(少陰腎経)に刺入し、響かせたら、首の痛みが消失し、3回で治癒した。

■考察

 

一般に邪気(風、寒、湿などの外邪、打撲捻挫などの外傷)は皮毛→孫絡→絡脈→経脈→臓腑へ伝わる。これは病の発展段階を示しており、病の経過にしたがって邪気が身体の奥深く入り、臓腑へ達することを言っている。
  発病後まもない頭痛、発熱、咽喉痛などでは、邪気はまだ表位(皮毛→絡脈)にあるので刺絡が即効する。急に卒倒して半身麻痺となる中風の初期に井穴刺絡をすると、速やかな覚醒が期待できる。これらは繆刺法の応用である。“急なればその標を治し...”の原則にも合致する。
  次に、経脈に入った中経脈といわれる顔面麻痺などでは、反対側の経脈上のツボに取穴して、左右の陰陽のバランスをとると即時に顔面の運動筋の動きが改善される。これは経脈に邪が存在しているので、巨刺法により経脈の左右の陰陽のバランスがとれて治癒するものと思われる。
  これらに対し、陰陽太極鍼法は臓腑機能の異常まで調整できる。もともと臓腑機能に異常がある時に、邪気が入り、慢性化した各種症状(痛み、痺れ、腫れ、熱、痒み、皮膚疾患等)に適応する。太極点は上下左右表裏の陰陽を調整する一点であり、そこへ鍼を刺入後(皮膚鍼等でも可)、腹部の圧痛、硬結、陥下、膨隆、冷、熱等も同時に改善されることが多い。

■結論

 

従って、繆刺は絡脈、巨刺は経脈、陰陽太極鍼法は臓腑のそれぞれの陰陽のバランスを調整できるので、それぞれの病の発展段階に応じた刺法を応用することにより、速やかな効果が得られるものと考える。